「TPP11があって良かった。勝つために、日米同盟を対等にしなきゃ」-日米貿易交渉

解説-9月25日、ニューヨークで日米の新たな貿易協定について、共同声明に署名し、最終合意しました。農産品の関税はTPPの水準まで引き下げる一方でコメの無関税輸入枠の導入は見送り、また、自動車の関税撤廃は事実上、先送りされました。

日本側が求めていた自動車・同部品の関税撤廃については、追加関税を導入しないとしたものの、関税は据え置いたままで、また、具体的な撤廃時期は示されず、継続して交渉するにとどまりました。一方、アメリカが強く求めていた農産品について、TPP水準までの大幅な譲歩を日本側が認めた形です。アメリカ側は米国の農業にとって、「非常に大きな勝利」と発言しています。

以上のことから、日本が全体的に押し込まれてしまったという評価を下されています。アメリカに完敗とか、外交的敗北という声で溢れていますが、本当にそうでしょうか。また、その根本原因は何なのでしょうか。

-TPP11の効用を報道しないマスコミ

今回の貿易協定は本当に日本の完敗なのでしょうか。日本側が要求していたのは自動車・同部品の関税撤廃です。しかし、トランプ大統領は関税の撤廃どころか、追加関税をちらつかせていました。今回の合意で、この追加関税の導入見送りを確約することができたものの、関税撤廃については継続協議にとどまっています。

一方、アメリカが要求していた農産物の関税については、72億ドル相当の関税が撤廃ないし削減されます。これは日本円にして約7760億円となります。トランプ大統領も「米国の農家や畜産業者にとって実に莫大な利益になる」と記者団に語っています。

これをみると、日本側はトランプ大統領の脅し文句を取り下げさせただけで、実際に自動車・同部品の関税は動かせず、アメリカ側は実際に農産物の関税を撤廃ないし削減させることに成功し、日本が無気力に完敗したように思えます。

しかし、私はトランプ大統領というWTO無視の自国ファーストのアメリカを相手に、十分健闘したと思います。この日米貿易協定を報じるニュースに出てくる「米農産物の関税をTPP水準まで引き下げる」という文言ですが、この中の「TPP水準」という単語の背景を何故解説しないのか不思議です。

この「TPP水準」というのは、トランプ大統領になってアメリカが急に抜けた後に、日本が主導してまとめた「TPP11」のことです。アメリカが抜けたTPPは意味がないという反対の声もあった中、当時の甘利TPP担当大臣が尽力してまとめ上げました。

この「TPP11」の関税水準があることによって、今回の交渉でもその基準が防波堤になったと言えます。トランプ大統領は米中貿易戦争でも特に根拠もなく、25%の関税を上乗せしていますし、メキシコへの不法移民流入に関しても5%の関税を課し、不法移民の流入が止まるまで段階的に上げていくといった無茶苦茶な関税の掛け方をする人物です。

そのトランプ大統領であれば、農産品の関税を0%にするように要求してきてもおかしくはなかったでしょう。それがTPP11の基準がある為に、中国やメキシコに対してのような無理な要求を食い止められたと見ることもできると思います。

-交渉力が弱い原因は何なのか

TPP11によって被害が食い止められたとしても、今回の交渉で全体的にアメリカに押し込まれたのは事実です。思い出せば、日本は戦後の日米の貿易に関する協議では常に押し込まれています。

その根本原因は何なのかにマスコミが触れることはありません。もっと強気に出るべきだったとか、交渉力がなかった為に押し込まれたかのような報道に終始します。今回もきっとそうでしょう。

そもそもアメリカは現世界の覇権国です。軍事力も経済力も世界一であり、国際決済通貨のドルを発行しています。また、日本はアメリカと日米同盟を結んでいます。この同盟は安保条約改正や平和安全法制で多少改善されたものの、現在も片務的であり、日本はアメリカ本土が攻撃されても出兵することはできませんが、アメリカは日本が攻撃されれば、共同して防衛にあたることになっています。

つまり安全保障の面で日米は対等な立場にないわけですから、最終的に安全保障を交渉の脅しに使われたら、日本は降りるしかないというのが、日本とアメリカの交渉の土台なのです。

まとめ:表面的な敗北に惑わされではいけない。

この条件の中でやるからには、日本が最終的に押し込まれてしまうのは必然です。そうした日本の交渉の弱さの根本を克服するためには、日本は憲法を改正して、自衛隊を国防軍にして、同盟国が攻撃を受ければ、日本も同盟国と共同で防衛に当たるという。本当の意味で対等な日米同盟を構築しなければならないのです。

対等な同盟関係になれば、安全保障を絡めた脅しにも対抗することができますし、アメリカではなく他国と同盟することもできるという逆の脅しもできます。(前記事で述べましたが、世界最強のアメリカ戦わなくて良いというのが、日米同盟の最大のメリットなので、日米同盟の解消は現実には、絶対に行ってはなりませんが)

しかし、マスコミはこうした日本の交渉力が弱い根本原因に触れることはなく、政府の交渉が悪いとしか報道しません。なぜなら、その原因が憲法にあることが国民に知られてしまうからです。私たち国民がこうした表面だけの報道に騙されることなく、日本の交渉力が弱い原因が何なのかを自分の頭で考えていくことが必要だと思います。

TPP11が効果を発揮したのではないかという見方と日本の交渉力の弱さが憲法に起因するものであるというマスコミが言わない見方も人とは違った見方と言えるのではないでしょうか。

「小泉新大臣は汚染水の真実を発信するチャンスを潰したな」

解説-9月11日に行われた内閣改造の目玉は小泉進次郎氏の環境大臣就任でした。早速、福島第一原発の汚染水に関して、前原田環境大臣の「海洋放出しかない」との発言を関係者に謝罪するというパフォーマンスを行いました。

また、原発についても就任記者会見で、「どうやったらなくせるかを考え続けていきたい」と述べ、原発依存度を下げて、再生可能エネルギーの比率を高めたいという考えを示しました。

いずれも大衆ウケしそうで、自分のキャラクターを熟知しているなという印象ですが、今回の発言は、勉強不足と判断の悪さを露呈しており、国を導いていく政治家としては現状では期待できないと思います。

-トリチウム(三重水素)は海洋放出しても問題ない。

現在、福島第一原発から出ている汚染水について、中に含まれている放射性物質について、全く報道されていません。このことが、風評被害を生む大きな原因ですし、風評被害を恐れるからこそ、漁民の方々が海洋放出に反対しています。

そもそも、福島第一原発からどのように汚染水が出ていて、原田前環境大臣が「海洋放出しかない」と発言したことは、本当に間違いなのかについて検証していきます。

福島第一原発では事故によって生じたデブリ(融解燃料)を冷やし続ける為の水や雨水、地下水が放射性物質に汚染されることで、汚染水が発生しています。一時期よりは減ったものの、現在でも1日約170万トンの汚染水が発生しており、その汚染水は福島第一原発の構内に貯蔵されていますが、貯蔵スペースにもコストを負担することにも限界があります。

しかし、この汚染水の中身については何となく「放射性物質に汚染された危険な水」という認識しかない国民がほとんどではないでしょうか。科学的にこの汚染水を見ていくと、放射性物質に汚染された直後に専用の放射性物質除去装置の多核種除去設備 (ALPS)によって、トリチウム以外の放射性物質は告知濃度(法律で定められた放出のための濃度限度以下)にまで除去されています。

つまり、汚染水とは技術的な問題で除去が難しい放射性物質のトリチウムだけが除去できずに残っている水ということになります。このトリチウムは自然界にも存在している物質で、私たちが飲む飲料水にも含まれており、半減期は約12年です。また、トリチウムの放出するβ線のエネルギーは非常に小さく、被ばくリスクも小さく、体の特定の部位に滞留することも起こりにくく、人体への影響も他の核種と比べて非常に小さい為、海洋に放出しても問題ないとされています。

だからこそ、世界の原発では一定の基準以下にまで希釈されたトリチウムは海洋放出しても問題ないとされています。「放射線オリンピック」と日本を中傷している韓国の原発でもトリチウムは海洋放出されているのです。

-やるべきことは風評被害をなくすこと

汚染水に関して、「海洋放出しかない」という原田前環境大臣の発言は個人的見解を述べたに過ぎず、海洋放出の是非については経産省の委員会で議論されている段階です。しかし、上記のような科学的見地と世界での処理状況を考えると、結論は「海洋放出しかない」に落ち着くのではないかと思います。

国民の大多数も汚染水の内情について、マスコミが報道しない為、詳しく知ることもなく、何となく放射性物質が入って危険じゃないか程度の認識しかないのが現状です。そんな状況だからこそ、海洋放出に対して、風評被害が起きることは必然であり、地元で商売をしている漁業者が風評被害を恐れて、反対するのは当然のことです。

この現状を変えることこそが、国益であり、福島県の復興にもつながることです。汚染水問題を世界標準の方法に沿って、海洋放出によって解決し、国民に正しい知識を浸透させることで、福島県に対する風評被害を抑えて、地元の方々の生活を取り戻すことこそ、政治に求められていることです。

その為に小泉新大臣には自らが持つ人気と発進力を駆使して、風評被害の現況である汚染水に対する国民の認識を正すことが求められます。現状では、それとは真逆の謝罪パフォーマンスしかできていないことはとても残念です。

まとめ:将来の首相に向けた正念場

この汚染水問題だけでなく、就任会見での原発をなくし、自然エネルギー比率を増やしたいと発言もしています。どうしても、一連の反原発の言動の背後に父親の小泉純一郎元総理の影がちらついてしまいます。本当に信念を持って、反原発を主張するのであれば、国家としてのエネルギー政策についての所見を述べるべきです。

中東情勢が緊迫化している中で、原発を廃止しても、国内のエネルギー供給に問題はないのかといった海外要因も含めて、反原発を実現する為の具体的な政策を提言してほしいと思います。父親の純一郎氏は政治家を引退しているので、自分の理想を語るだけでも許されますが、政治の最前線にいる進次郎氏は理想だけでは政治が動かせません。

利害関係者の説得や党内の根回しといった水面下の汚れ仕事をこなせるようにならなければ、自分の実現したい政策は実行できません。進次郎氏は初当選から抜群の人気で、次の総理にふさわしい政治家としても常に上位をキープしています。しかし、今回の環境大臣就任により、政治家として成長できるのかを試される時が来ています。

大臣就任後の初手としては、汚染水について世界標準の処理方法について不勉強であったために、前大臣の海洋放出発言の謝罪というパフォーマンスにより、逆に汚染水の解決を遠ざけてしまったと思います。

ここから挽回して、本当の将来の総理候補になれるのでしょうか。異例の若さでの初入閣を見れば、国民だけなでなく、自民党も小泉氏には期待しているのは確かです。

私としては、まずは汚染水について正しい知識と世界標準の解決法を勉強して頂き、自身の人気と発信力をフル活用して、マスコミを動かすことで、国民に正しい知識を浸透させ、地元を説得させた上で世界標準の海洋放出を行うことができるような政治家に成長してほしいと思います。

「主体思想信奉者のチョ・グク氏の強行任命はワイドショーネタの笑い話じゃないよ。」

解説-文在寅大統領は数々の疑惑が浮上していたチョ・グク氏を法相に強行任命しました。いくつもの疑惑が出てくることから、「玉ねぎ男」と揶揄され、日本でも面白おかしく取り上げられていましたが、背景を知ると笑えない未来が待っている可能性があるのです。

このチョ・グク氏は北朝鮮の政治思想である主体(チュチェ)思想を信奉していることを隠していません。文大統領自身は主体思想派であることを表立っては認めていませんが、自他共に認める北朝鮮派のチョ・グク氏を強行任命することは、韓国政府が北朝鮮派に乗っ取られた革命政権であることを隠さなくなったと言えるのです。

-主体(チュチェ)思想とは

主体(チュチェ)思想とは朝鮮労働党および北朝鮮の指導指針とされる思想です。基本的な考え方は「人間が全ての主人公であり、全てを決める」ということです。個々の人間が主人公であり、一人ひとりが「主体」的に行動し、政治・経済・思想・軍事全てにおいて自主・自立を貫く国を作ることが正しいことだとされます。

しかし、一人ひとりが個別に行動しても、帝国主義や軍国主義や金融資本といった悪い勢力に潰されてしまいます。だから、そのような勢力に負けない為に、一人ひとりの人間が団結して、組織的に動くことが必要だということになります。

この組織を人間の身体に例えると、組織的に動くにあたって大事なものはその組織を指導する「頭脳」です。その「頭脳」が指示を出して、「神経」である朝鮮労働党が指示を全身に伝達し、「手足」である人民が動くことで、組織としての身体が正しい方向に動くことができます。

そして、「頭脳」には革命的血統を持つ正しい方向に導いていける指導者がいて、これが金一族のことです。「頭脳」が倒されれば、身体の「手足」である人民も全滅してしまいます。だから、人民は全ての犠牲を払って、時には命を投げ出しても「頭脳」を守ることが正しいこととされます。

お気づきの通り、この思想は金一族独裁体制を支える為だけの思想です。人民に金一族に対する絶対の忠誠を植え付ける為の思想にすぎません。現在の北朝鮮を見れば、自主・自立した国で、人間が主人公となった国家とはとても言えません。

それでも、北朝鮮の人民はこの主体思想を徹底的に教育されることにより、金日成・金正一・金正恩と3代に渡って続く、独裁者を絶対に守るべき「頭脳」として、犠牲を払わされ、崇拝させられているのです。

-韓国の主体思想派の謎

独裁国家である北朝鮮国内であれば、情報も遮断され、教育も徹底され、反抗すれば政治犯収容所に入れられてしまう為、ほとんどの国民が主体思想に染まってしまうことは納得できます。しかし、情報も自由に入ってくる民主主義国家であり、北朝鮮を主敵としているはずの韓国で、主体思想を信じてしまう人がいる理由はなんでしょうか。

これは北朝鮮が入念なスパイ活動により、司法界、メディア、教育界、そして労組を主体思想に染めていったからです。しかし、それでも金一族という独裁者を礼賛する思想が(仮にも)民主主義国家である韓国で受け入れられたという理由は、韓国に比べ、北朝鮮の建国の歴史のほうに正当性があるように感じられる部分があったからではないかと思います。

北朝鮮の建国の歴史は、抗日パチルザンという朝鮮独立運動神話が大きく関わっています。この神話では、日本の統治時代に満州で抗日パチルザンを組織していた伝説の金日成将軍が、日本軍を打ち破って、1945年8月に凱旋帰国し、北朝鮮の指導者となったとされています。

北朝鮮の建国の歴史は、抗日パチルザンという朝鮮独立運動神話が大きく関わっています。この神話では、日本の統治時代に満州で抗日パチルザンを組織していた伝説の金日成将軍が、日本軍を打ち破って、1945年8月に凱旋帰国し、北朝鮮の指導者となったとされています。

本当は、伝説の金日成将軍と金正恩委員長の祖父の金日成国家主席は年齢が合わず、別人であるという話や、日本軍を打ち破るどころか戦闘自体がなかったのではないかという話もあります。なので、これらの建国の歴史はあくまで神話なのですが、アメリカから開放してもらい、アメリカの傀儡の李承晩が初代大統領になった韓国側から見たら、朝鮮独立の為に日本と戦い、まさに「主体」的に日本を打ち破って国を建国した北朝鮮のほうが、朝鮮民族としての正当性があると感じてしまう人もいるのです。

実際には北朝鮮もソ連の傀儡政権であり、全く「主体」的とは言えないのですが、朝鮮を併合していた悪の日帝を打ち破り、核開発に邁進し、大国アメリカを手玉に取って「主体」性を維持しているというストーリーに見えてしまう韓国民が存在しても、仕方ないのかもしれません。

加えて、そういったストーリーを喧伝する主体思想派がマスコミや教育界に巣食っていますので、主体思想のバイアスが掛かった教育や報道を受けて育った韓国国民が増えているのです。その結果として、北朝鮮に対する脅威は矮小化され、今回の文在寅政権という従北政権の誕生へと至っているのです。

まとめ:韓国という国はなくなるかも?

文在寅政権は就任以来、対北朝鮮に対しては一貫して融和姿勢であり、政権内部には主体思想派が多数存在すると言われています。対北政策では、米韓合同軍事演習の縮小、南北境界線の地雷の撤去、国内情報担当官の廃止、GSOMIAの破棄と韓国軍の弱体化政策をとり続けています。

これは文在寅大統領が北主導の統一に向けて進んでいる一つの状況証拠とも言えます。この従北の姿勢に反発した韓国軍人と外交官OBが「文在寅政権の国家安保蹂躙(じゅうりん)行為を弾劾する」という激烈な声明を発表しています。また、数万人単位の反文在寅大統領の集会も行われています。このように、このままでは韓国が危険だと感じている韓国民もいますが、そういった声は韓国のマスコミはほとんど取り上げません。

その文在寅政権の最後の仕上げがチョ・グク氏の法相就任なのです。主体思想派のチョ・グク氏が法相に就任したら、保守派の大弾圧を行うでしょう。既に韓国では政府寄りのメディア以外は壊滅状態ですが、完全に絶滅状態にまで至るでしょう。主体思想によれば、一番大事な「頭脳」は金正恩様なのですから、それに反する批判は許すはずがありません。

就任後も娘の事情聴取が行われるなど、検察の最後の抵抗が続いていますが、ここで検察が押し切られることがあれば、韓国の検察は思想警察と化し、文政権や北朝鮮を批判する政治家や言論人は文字通り抹殺されるでしょう。その後、文在寅氏の予定通りにチョ・グク氏が不正選挙により、次の大統領に就任し、韓国が吸収される形での朝鮮半島統一に向かうと思われます。

それほど、主体思想思想派であることを隠していないチョ・グク氏の法相就任は韓国国家的危機とも言える事態なのです。マスコミはチョ・グク氏が主体思想派であることを報道しません。「玉ねぎ男」とか、文大統領がお友達を強行指名しようとしているだけと言った認識では、この先の韓国政治の動きを見誤る可能性があるのではないでしょうか。このような視点も人とは違った見方と言えるのではないでしょうか。

北朝鮮・新型ミサイル-「アメリカが北朝鮮と組むシナリオもあるかも」

解説-北朝鮮が今年に入って短距離弾道ミサイルの発射を繰り返しています。これに対して、弾道ミサイル発射は安保理決議違反にも関わらず、トランプ大統領は問題にしていません。G7サミットでもこのミサイル発射を問題とする日本と問題としないアメリカの温度差がありました。

英・仏・独も共同声明としてこの弾道ミサイル発射を非難する共同声明を発表しました。地理的に東アジアから遠く、直接の脅威になりにくい欧州の3ヵ国が懸念を示しているにも関わらず、在日・在韓米軍が駐在しているアメリカのトランプ大統領がこの短距離弾道ミサイル発射を一貫して問題としない姿勢は不可解です。

-新型ミサイルは迎撃できない?

北朝鮮は5月4日以降、合計9回の短距離弾道ミサイルを発射しています。っミサイルの種類としては、一種類がロシア製の短距離弾道ミサイル「イスカンデル」に類似した新型と分析されており、もう一種類は米国製の地対空ミサイル「ATACMS」に似ているという指摘もあります。

いずれのミサイルも単純に放物線を描くこれまでの弾道ミサイルの軌道と異なり、軌道の途中で水平飛行に移る特殊な飛び方をする為、従来のミサイル迎撃システムでは撃ち落とすことが難しいと分析されています。

これは第一には韓国に対しての脅威です。今回の9回の発射いずれも韓国内をカバーする射程の距離しか飛んでおらず、韓国国内どこでも狙えるミサイルです。もちろん、発射の角度を変えれば、西日本の一部までは十分届く距離なので、日本にとっても脅威であることは間違いありません。

しかし、第一の目標は韓国なのですから、韓国内の在韓米軍にとっては脅威になるはずですが、トランプ大統領は問題ないという姿勢を崩していません。これは私が前の記事で「アメリカは在韓米軍を撤退させ、米韓同盟の解消に向かう」という主張の傍証になる出来事であると思います。

-だれが米製の「ATACMS」を北朝鮮に流したのか

トランプ大統領が今回の一連の短距離弾道ミサイル発射について問題としない姿勢でいることについては、アメリカがいずれ在韓米軍を撤退させるからアメリカ人は死なない、だから問題がないのだという仮説で説明が付くと仮定します。

しかしそれでも、8月24日の新型ミサイルが米国製の「ATACMS」に似ており、北朝鮮にアメリカの技術が流されたという重大な事件に対してアメリカが反応していないのは何故かという疑問が残ります。

どこから北朝鮮に流れたのかと考えた時に、最初に思い浮かぶのは親北どころか従北とも呼べる文在寅が大統領を務める韓国でしょう。もし、犯人が韓国であれば、それだけで米韓同盟の解消に直結するような大問題です。

次に考えられるのは北朝鮮のハッカー部隊によるハッキングです。北朝鮮のハッカー部隊は非常に優秀と言われており、日本のコインチェックからの「XEM」という仮想通貨流出事件の犯人も北朝鮮のハッカー部隊ではないかとの噂もあります。

この北朝鮮のハッカー部隊が犯人であれば、アメリカの軍事情報のネットワークセキュリティの強化が急務となるはずですが、アメリカ軍にそのような動きはありません。

このような状況を考えると、一つの突拍子もないようなシナリオが頭に浮かびます。それが今回の一言に繋がるのですが、アメリカが北朝鮮と組むシナリオを考えているということです。

-まとめ:アメリカが北朝鮮と組むシナリオ

最初にこのシナリオは、今回の北朝鮮が発射した新型ミサイルが米製の「ATACMS」だと仮定した場合が全ての前提であることを先にお断りしておきます。(ロシア製の「イスカンデル」の改良品であるという説もありますので)

まず、「ATACMS」の技術やミサイル本体そのものを韓国が流出させていたとしたら、アメリカ軍は軍事統制権を持っていますし、韓国軍の指揮権はアメリカ軍の司令部にあることを考えるとその流出事態は掴んでいるはずです。また、北朝鮮ハッカー部隊のハッキングによるものであれば、同じく当然アメリカ軍は盗まれたことを認識していると考えられます。

であるとすれば、いずれの異常事態にも表立って反応しないということは、アメリカは流出したことを黙認しているということになります。ここで、今回一連の北朝鮮がいずれも東側の日本海に向けて撃ったミサイルを、反対の西側に向けて撃ったと仮定します。

そうすると、いずれも北京をはじめ、中国の主要都市に全て届く弾道ミサイルと言うことができます。私のブログで何度も記事にしている通り、現在のアメリカの主敵は完全に中国であり、その為に自国に痛みを伴っても経済戦争を仕掛け、サプライチェーンの引きはがし戦略を取り、中国の覇権主義を抑え込むために「インド太平洋戦略」という戦略を取っています。

もし、北朝鮮がアメリカと組むことになれば、中国の喉元に中国の主要都市を攻撃できる短距離ミサイルを持った脅威が突然出現することになります。金正恩委員長としては金王朝の体制保障だけが唯一の要求であることは、過去2回の米朝首脳会談から明らかですし、北朝鮮は8月に行われた米韓合同軍事演習でも韓国のことは激しく非難しましたが、アメリカに対しては一貫して批判のトーンは控えめです。特にトランプ大統領個人に対しては米朝首脳会談以降、罵るような発言は出てきていません。

逆にトランプ大統領も金正恩委員長に対して、米朝首脳会談以降、「恋に落ちた」とまで表現し、第二回の米朝首脳会談が物別れに終わった後も、親書を送り合うばかりか、電撃的に板門店で会談し、アメリカの大統領として初めて北朝鮮国内に足を踏み入れるパフォーマンスを披露しています。

このように考えると、北朝鮮が核を放棄し、アメリカが金王朝の体制保障をするという交渉に、北朝鮮の短距離弾道ミサイルはそのまま認める代わりにアメリカと軍事協力を行い、中国にミサイルの標準を向けるとことを条件とするという新しい要素を加えると、この交渉は北朝鮮にとってもアメリカにとっても悪くない交渉に思えます。

もちろん、現状では北朝鮮は中国と中朝友好協力相互援助条約を結んでおり、北朝鮮をアメリカが取り込むのは簡単ではありません。しかし、この条約は20年ごとの自動更新ですが、奇しくも2021年7月に自動更新の時期を迎えるという絶妙のタイミングでもあります。

今回の一言はあくまでも頭の体操のような突拍子もないシナリオの一つですが、こんなシナリオが有り得るくらい、現在の国際情勢は混沌としています。日本もいろんなシナリオを想定した上で、国際社会を生き抜いていくかじ取りをしていく必要があると思います。このような常識を疑うような視点も人とは違った見方と言えるのではないでしょうか。