「解散権がないことがイギリスを追い込んでるんだよ」-ブレグジット

解説:イギリスのEU離脱の混乱が収束しません。今月、ジョンソン首相がEUをまとめた合意案が18日にイギリス議会で否決され、今月末に離脱に期限を迎える中で、また振り出しに戻ってしまいました。

前メイ首相の時から、首相がEU相手にまとめてきた離脱案を議会が否決することが繰り返されています。この混乱の原因について、私の見方はイギリスでは首相に解散権がないからだと考えます。この視点で論じる日本のメディアが少なすぎると思います。

-解散権とはどのように行使されるか

2010年のイギリス総選挙でどの政党も過半数を取ることができない事態が発生しました。こうなると、複数の政党が連立を組んで、過半数を得るしかありません。その際に、保守党が自由民主党と連立を組む為に、自由民主党側が要求した議会任期固定法を制定します。

この法律は、内閣不信任決議に対する解散権行使か、下院の3分の2以上の賛成による自主解散によってしか、議会が解散されないことを定めるものです。つまり、首相の解散権を事実上、取り上げるものです。

これにより、イギリスの首相は解散権を行使できない状態になりました。議会の多数派が首相の政策に全て賛成してくれるのであれば、問題は起きません。首相は議会の多数派の指名によって、選出されるからです。

しかし、EU離脱のように多数派内でも賛否が分かれるような事案になると、議会の多数派の同意を得ることができなくなります。日本で言えば、小泉純一郎元首相の時の郵政民営化法案の時を思い出して頂けると近い事例かと思います。

郵政民営化法案の時は議会の多数派である自民党の中で、多くの反対議員がいて、自民党内をまとめることができず、参議院で法案が否決されるに至りました。そこで、小泉元首相は衆議院を解散して、郵政民営化を争点として、総選挙を行いました。その結果、自民党が大勝し、民意を得たことで、反対派だった議員も賛成に転じ、郵政民営化法案は議会の賛成多数を持って成立しました。

郵政民営化や小泉元首相の「郵政解散」についての是非は今回論じませんが、この例では首相の進めたい政策に対して、議会の反対にあって、政策が停滞したときに、首相が解散権を行使しました。そして、選挙によって民意が示された結果、議会も民意を受けて賛成にまわり、議会として法案を可決したという流れです。

このように解散権があれば、首相が進めたい政策に対して、議会が反対した際に、議会を解散して民意を問うことが出来ます。それがイギリスでは、この首相の解散権がない為に、今回のような混乱が続いているのです。

-解散権の制限は主権者を見下す行為

日本では、この解散権について、前回と前々回の衆議院選挙の際に、多くの批判にさらされました。「大儀がない」、「野党の準備不足と狙ったものだ」、「イギリスは解散権に制限をかけているのに日本はおかしい」などの批判がありました。

しかし、今回のイギリスのEU離脱についての堂々巡りを見ると、首相に解散権がないということは、これだけ政治を停滞させるという見本になっています。内政に関するものであれば、影響は国内のみで収まりますが、ブレグジットのように他国が絡む外交の問題についても、首相が多国間で合意したことを議会が否定し続け、その議会を解散する手段がないので、また再交渉と繰り返せば、国際社会からの信頼も失ってしまうことになります。

そもそも、解散権を行使して、総選挙を行うということは、国民が選挙を通じて、主権を行使する機会を得るという見方もできるのです。この視点を無視して、解散権が自分の権力強化に利用する為にあるかのように論じるのは、主権者である国民が時の権力者に有利な投票しかしないと決めつけて、主権者を見下している議論だと思います。

むしろ、解散権がないことで、イギリスは国民がEU離脱に関して、主権を行使する機会を奪われているのが現状です。そして、合意なき離脱の期限が迫っており、首相も国民も手の打ちようがなくなっています。

まとめ:事実を知って国民で考えよう

この状況を三権分立に沿って考えてみます。(今回関係の無い司法は除く)国会、内閣、司法の三権分立において、議会は内閣に対して、総理大臣の指名と内閣不信任案の決議権を持っています。内閣は国会に対して、国会の召集と議会の解散権を持つことになっています。

現在のイギリスでも内閣は国会に対してこの二つの権限を持ってはいます。ですが、議会の解散権は、内閣不信任決議に対する解散権行使か、下院の3分の2以上の賛成による自主解散によってしか行使されなくなっています。内閣が内閣のみの判断で議会を解散させることができないのです。

このように考えますと、イギリスでは解散権が首相=内閣に実質的にないことによって、一方で議会の権限が圧倒的に強化されており、三権分立が成立できていないのではないかという現実が見えてきます。

このイギリスの状況は同じ議員内閣制の日本が勉強できる事案です。それにも関わらず、日本のマスコミはイギリスの首相と議会との対立のみにフォーカスし、首相の解散権がないことが根本原因であることに言及しません。

前回、前々回の安倍首相が解散権を行使したことに対しては、マスコミや立憲民主党をはじめとする野党は、「解散権を制限しろ」、「解散権を制限しているイギリスは進んでいる」と批判していたにも関わらず、今回、イギリスが「解散権を制限しているからこそ」起こっている政治の停滞については、表面上の報道しかしません。

このダブルスタンダードの姿勢こそが、マスコミや野党勢力が信用されない原因だと思います。そして、そういう報道しか見てない人たちにこそ、こうした政治現象の背景を知ってもらい、日本はどうしていけばいいかを考える人が増えてほしいのです。

単純な表面のイギリスの首相と議会の対立というだけでなく、どうして対立が起こり、どうして解決しないのかという原因には「首相の解散権」という日本の政治制度にも関係する要素が潜んでいるという見方も、人とは違った見方と言えるのではないでしょうか。

「結局、原因の種を植えたのはアメリカなんだね」ートルコシリア侵攻

解説-10月9日、トルコ軍はシリア北部の少数民族クルド人の武装組織「人民防衛隊」(YPG)の支配地域に対して、越境攻撃を開始しました。YPGはトルコ国内のクルド人の反政府武装組織「クルド労働者党」(PKK)とつながりがある為、YPGをテロリストと認定し、エルドアン大統領は「トルコに対するテロの脅威を排除するのが目的だ」と表明しています。

私は攻撃を仕掛けるトルコが悪いとか、トルコ国内の武装組織とつながりがある為、クルド人が攻撃されても仕方がないという見方ではなく、元をたどればアメリカのせいではないかという見方をします。

-トルコはNATOの一員。西側陣営のはずだが?

NATO(北大西洋条約機構)はアメリカを中心とした西側諸国がソ連(東側諸国)を中心に作られたワルシャワ条約機構に対抗して作られた多国間軍事同盟です。1949年に発足していますが、55年のドイツの加入よりも先の53年にトルコはNATOに加盟しています。

NATOは域内いずれかの国が攻撃された場合、共同で応戦・参戦する集団的自衛権発動の義務を負っています。このNATOが冷戦において果たした役割は大きく、同盟国内で軍事情報や核兵器までも共有することで、東側陣営に圧力をかけ続け、最終的にはソ連の崩壊まで追い込み、西側陣営の勝利に貢献しました。

トルコはそのNATOに早期から加入していた自由主義陣営=西側陣営の国です。そのトルコがエルドアン大統領の就任後は急速に独裁色を強めていきました。同時に、アメリカから離れ、ロシアに接近する動きを強めています。

-IS殲滅とクルド人

トルコのロシア接近にはシリアの内戦とIS(イスラム国)が大きく関わっています。2011年にチュニジアで起きたジャスミン革命を発端とする民主化運動の「アラブの春」に触発されたシリア国民が民主化を求め、アサド大統領はこれを弾圧します。これがエスカレートし、アサド政権と反体制派によるシリア内戦が勃発します。

アメリカを中心とした欧米諸国はシリアのアサド大統領に対して、民主化運動を弾圧し、反体制派に化学兵器を使用した疑惑などから、退陣を要求してきました。これに対して、中東に影響力を強めたいロシアは内戦時からアサド大統領支持を鮮明にしてきました。

民主化運動後の内戦では絶体絶命まで追い込まれたアサド政権でしたが、IS(イスラム国)の台頭により、命拾いをします。テロ組織にも関わらず、国を作ろうと画策したISはシリア領内に支配地域を広げていきました。また、その支配地域では人権無視の残虐行為が行われていることが明らかになっていきます。

ISは国際社会の絶対的な敵になり、国際社会が団結してISを壊滅させることが至上命題というコンセンサスが形成されていきます。その後、アメリカとロシアを中心として、IS壊滅作戦を実行していきます。当然、シリアの内戦はアサド政権、反体制派の間で継続されていましたので、シリア国内で、IS、アサド政権、反体制派の三つ巴の展開となってしまいます。

IS壊滅が最優先課題となってしまったことが、アサド政権の息を吹き返させることにつながってしまいます。IS殲滅の為という理由がロシアにシリア領内の軍事展開する口実となってしまったのです。

これに対して、アメリカは反体制派を支援する形で、IS殲滅を目指しました。しかし、アメリカはここで今回のトルコの越境戦争につながる失敗を犯します。シリア領内にいた「国を持たない最大の民族」と言われるクルド人民兵組織YPGを連携相手に選び、武器供与や軍事訓練を行い、ISとの地上戦を行ったのです。

結果としてISは壊滅しましたが、ロシアの支援を受けたアサド大統領は支配地域を広げ、反体制派の勢力は大きく減少しました。また、YPGの活躍もあり、トルコとの国境を接するシリア北部には、アメリカ軍が駐留する実質的なクルド人の自治区ができました。

実は、当時のオバマ大統領が地上軍を送ることができず、地上軍を事実上、「人民防衛隊」(YPG)に委任し、武器を渡してしまったことが、今回のトルコのシリア北部への越境戦争につながっているのです。

-トルコの視点に立てば・・・

この状況をトルコの視点に立つと、自国とシリアの国境に自国内の分離独立を目指すクルド人反政府武装組織「クルド労働者党」(PKK)と同じクルド人でつながりがある「人民防衛隊」(YPG)が存在しているのは、国防上の脅威です。

また、シリア内戦による難民の流入も止まりません。エルドアン大統領もEUが軍事攻撃を「占領」と呼ぶなら、数百万人の難民を送り込むと発言しています。EUへの難民流入を塞ぐ役割を押し付けておいて、エルドアン大統領が敵だと見なしているクルド人に肩入れするアメリカやEUに対する怒りも理解できる部分はあるのです。

結果的にとは言え、国内で手を焼いているPKKにつながっているシリアのクルド人に武器を供与し、国防上の脅威を増幅させてしまったアメリカに不信感を抱くことも理解できます。

トルコにとってみれば、シリア北部の国境沿いにクルド人の国家が出来てしまうことは何としても避けたい事態です。「敵の敵は味方」と考えれば、シリアのアサド大統領はクルド人を挟み打ちする上で、戦略上仲良くすべき相手となります。同じくその後ろ盾であるロシアも同様です。

だからこそ、2015年にはトルコ領内でロシア軍機が撃墜された後、悪化していた両国がいつの間にかガスパイプラインを繋ぎ、最新鋭地対空ミサイルを購入するまで接近しているのです。

まとめ:アメリカが紛争の種を蒔いて育てている

NATOの一員でありながら、武器をアメリカの潜在的な敵国であるロシアから購入するというトルコの行動は、本来であれば、アメリカが激怒してもおかしくないことです。しかし、トランプ大統領はオバマ前大統領のせいだと非難はしたものの、現実的にトルコに対して具体策を講じていません。

それどころか、今回のトルコから攻撃されているシリア北部でも、米軍が撤退すれば、トルコが軍事作戦を実施する兆候があったにも関わらず、撤退してしまいました。案の定、その翌日にトルコは越境攻撃を開始しています。

結果として、オバマ大統領の米陸軍を送らず、地上戦をクルド人に任せたという優柔不断さが、クルド人が武器を持つことになり、トルコの脅威と見なされました。また、トランプ大統領は「自国ファースト」を貫く為、そのIS殲滅に貢献したクルド人を見殺しにする形で、シリア北部から米軍を撤退し、トルコ軍の攻撃を招いた形です。

このように考えると、攻撃しているトルコも攻撃を受けているクルド人もどちらもアメリカの被害者とも見えてきます。当事者ばかりに目を奪われず、背後や歴史を見てみるという見方も人とは違った見方と言えるのではないでしょうか。

「韓国にとって入試は現代版の『科挙』なんだね」

解説-韓国のチョ・グク氏は多数の疑惑がありながらも、最終的には法相に任命されました。その疑惑の中でも最も韓国民を怒らせたのが、娘の不正入学問題でした。思い出せば、朴槿恵前大統領が辞めるきっかけとなったチェ・スンシル事件の時もチェ氏の不正入学疑惑が一番韓国民の怒りに触れた疑惑でした。

このように、韓国国民は権力者が権力を行使して近親者を名門大学に入学させるという不正に対しては、とてつもない怒りを覚えるようです。一つには苛烈な受験戦争社会である韓国において、権力者が実力もないのに権力を使って、その戦争を不正に勝ち抜くことに対する怒りがあるのでしょうが、私は歴史的な視点から新しい見方をしたいと思います。

それが今回のセリフにもある「科挙」という単語です。この「科挙」という視点から見てみると、現代韓国民が権力者の不正入学に対して、何故ここまで怒りが増幅してしまうのかが説明できるのではないかと思っています。

-「科挙」とは

「科挙」とは中国が隋の時代に優秀な人材を登用しようとしてはじまった試験制度です。それまでの古代中国では、官吏登用は推薦による選抜で行われていました。しかし、それでは権力の独占につながり、優秀な人材が登用できないということで、公平な学科試験を通じて、人材登用を図る為に「科挙」がはじまりました。

これはかなり画期的なことで、出自に問わず、科挙に合格さえすれば、官吏になることができるということです。ヨーロッパでさえ18世紀くらいまで高官は世襲が当たり前だったことを考えると、出自に関係なく、能力によって出世できるという何百年も先の先進的な制度を6世紀の隋が先取りしていたと言えます。

この科挙は隋が滅びた後の唐以降の王朝にも引き継がれました。また、科挙は朝鮮半島にも伝わり、788年に高麗が導入し、その後1894年に廃止されるまで、科挙制度は存続しました。ちなみに日本でも平安時代に科挙が導入されましたが、世襲の貴族の強い反対により、定着しませんでした。

優秀な在野の人材を登用する為にはじまった科挙制度ですが、実際は試験が難しく、出題範囲も膨大なため、親がお金持ちで、勉強する時間を使える人間でなければ、合格することは難しかったと言われています。それでも、当初は出自に関係なく、優秀な人材を登用できる科挙という制度は当時の世界最先端の制度だったと言えます。

しかし、明の時代になると科挙の出題範囲が変わっていきます、それまで、広すぎた科挙の主題範囲を四書五行(論語・孟子・大学・中庸・易経・詩経・書経・礼記・春秋)に絞ったのです。これは朱子学の影響が強くなってきたことが原因とされています。

以前の科挙では、実際の政策に関する意見を聞く散文の試験もあったのですが、明の時代には四書五経をひたすら暗記した人間が合格するという試験に変わってしまったのです。そうなると、古典を知っている人間が合格していき、現実の政策には知見を持たない人材が高級官僚として政治を動かすことになります。

こうして、科挙制度は優秀な人材を登用する制度としての機能を実質的に終えてしまいます。私は朱子学が持つ「礼」を重んじることによって起きる、上下関係を重要視する思想こそが、東アジアの民主主義への発展を阻害している原因だと思いますし、この朱子学を国家公認学問として朝鮮半島では現在でもこの朱子学の影響が残っていると思います。

-朝鮮半島への影響

この朱子学の「礼」を重んじる結果、上下関係を重視する思想と科挙が組み合わさった悪影響が出てしまったのが朝鮮半島です。朱子学を国家公認学問とした結果、「両班」と呼ばれる特権階級を頂点とした身分制度が確立してしまいます。

次第に科挙を受けることができるのは、両班と両班の次の階級である中人と呼ばれる身分だけになってきます。しかも、中人は高位の官僚にはなれない仕組みになっていくばかりか、中人より下の階級の身分の者は、科挙を受けることができなくなってしまいます。

こうなると出自に関わらず、優秀な人材登用を行う制度であった科挙の本来の意義はなくなり、両班という特権階級守るための制度になってしまったのです。身分を越えて優秀な人材を差別なく登用する科挙が、逆に身分を固定化して下位の階級を差別する為の制度として機能したというのは何という歴史の皮肉でしょうか。

まとめ:「両班」になるための「科挙」への不正は許せない。

いずれにせよ、朝鮮半島では両班を頂点とした身分制度は日本に併合されるまで続くことになりました。その後時代を経て、現在の韓国は自由主義経済の民主主義国家ですが、財閥の力が強く、現代版両班と呼べる状況なっています。

財閥が現代版両班だとすれば、その財閥に入るための資格である学歴を得るための大学入試は現代版の科挙と言えます。ただ、李氏朝鮮時代と異なるのは、当時は「科挙」を受けるために階級の制限があったのに対し、現在はいずれの国民も大学入試を受けることができます。

その公平さを取り戻した大学入試=科挙に対して、権力を行使して不正を行うことは、財閥=両班への皆に開かれた出世の手段である「科挙」に対する冒とくであるということになります。だからこそ、韓国民はかつて両班が権力を独占し、下の階級の身分の者を搾取し、なおかつ両班が身分を世襲してきた歴史を(無意識にしろ)思い出すからこそ、権力者の子供の不正入試に対してこれだけ国民感情が爆発するのではないかと思います。

このように、ニュースの中にもいろんな歴史的背景があるかもしてないと思ってみる視点も人とは違った見方と言えるのではないでしょうか。

「ボルトン氏の解任後、米国は米韓同盟を破棄し、北朝鮮と組む気なのかも」

解説-ボルトン大統領補佐官の電撃解任が発表され、その直後にサウジアラビアの石油関連施設が攻撃され、トランプ大統領はイランが関与しているとして、新たな制裁を検討しています。一気に中東情勢が動き出す気配がある中で、東アジア情勢も大きく変化していくと見ています。

-東アジアの変化

現在の東アジアは、近年にない大きな変化の兆しが見られます。一つは冷戦終結後の2000年台から中国が経済的に急速に台頭し、米国の世界覇権に挑戦していることです。それに対して、ようやくアメリカが中国の危険性に気が付き、対抗していこうとしているのが、現在の米中貿易戦争の本質です。

また、もう一つは朝鮮半島では親北の文在寅大統領により、韓国が北朝鮮へ傾斜していることです。親北どころではなく、従北もしくは北朝鮮の朝鮮労働党の秘密党員ではないかとの疑惑まで出ている文在寅大統領により、日韓・米韓関係も音を立てて崩れつつあります。

具体的に日韓間では自衛隊機へのレーダー照射事件、天皇陛下謝罪発言、自称徴用工判決が立て続けに起きました。現在は日本の輸出管理強化に伴う韓国のホワイト国除外に対して、韓国側も対抗して日本をホワイト国から外し、WTOに日本を訴えるといったように、日韓関係は戦後最悪レベルにまで冷え切っています。

米韓関係では日韓のGSOMIAの破棄により、日米韓で協力して北朝鮮に対抗していくという枠組みを韓国が一方的に破壊したことが象徴するように、米韓の同盟関係を破壊する動きが相次いでいます。例えば、在韓米軍の司令部がソウルから平沢(ピョンテク)に移転され、米韓合同軍事演習の規模が縮小され、大統領・統一外交安保特別補佐官の文正仁(ムン・ジョンイン)が「南北関係で最大の障害物は、国連軍司令部」と発言していることです。

国連軍司令部とは当然在韓・在日米軍のことです。同盟国のことを政府の人間が「障害物」と表現することは、大変な失言ですが、その後韓国内で特に処分されていないことを見ると、現在の文在寅政権の総意なのでしょう。

つまり、現在の文在寅政権は米韓同盟を必要としていないようです。このような韓国側の姿勢に対して、アメリカ側も米韓同盟は解消に向かうのではないかという声が出てきています。

アメリカの専門家からは韓国は歴史的に見て中国の属国だったという視点から、中国が韓国を引き剥がしにかかれば、米韓同盟の維持は難しい(CSIS(戦略国際問題研究所)のMichael Green副所長)との意見や、在韓米軍が地政学的な見地から韓国から撤退しないと思い込んで、反米を続けていると、フィリピンのように撤退することがあるとの懸念を示す意見(スタンフォード大学のシン・ギウク教授)が出てきています。

-米韓同盟の破棄を北朝鮮との取引材料に

そもそも、米韓同盟は冷戦時の主敵であるソ連に対抗する為に必要とされたものであり、ソ連が崩壊し、アメリカの主敵が中国へと替わったという状況を考える必要があります。アメリカからすれば、新たな主敵である中国に対しても韓国がアメリカと同じように対峙していく気がないのであれば、米韓同盟の存在意義は疑われて当然です。

実際に韓国はアメリカが中国包囲網の為の「インド太平洋戦略」に加わろうとしていません。そうなりますと、現在の米韓同盟は対北朝鮮と対峙する為だけにあるのが現状です。もちろん、北朝鮮のアメリカまで届く長距離弾道ミサイルと核兵器はアメリカの脅威です。それらの監視の為に在韓米軍が北朝鮮の隣の韓国に居ることはとても意味があります。

しかし、逆に言えば、北朝鮮の長距離弾道ミサイルと核兵器がなくなれば、アメリカにとっての脅威はなくなるわけですから、在韓米軍を置いておく意味は薄れます。韓国が現在のアメリカの主敵である中国に対して、アメリカと連携して中国と対峙する気があるのであれば、在韓米軍・米韓同盟は地政学的に意味がありますが、先述の通り、「インド太平洋戦略」に加わるどころか、THAADミサイルの配備ですら順調に進まない現状を見れば、韓国が中国と対峙する気がないとアメリカが判断しても仕方がないと思います。

そうであるならば、アメリカにとって在韓米軍(米韓同盟)を維持するよりも、北朝鮮の長距離弾道ミサイルと核兵器の脅威を取り除いて、在韓米軍を撤退させた方にメリットがあることになります。

そうであるならば、北朝鮮との取引材料として在韓米軍の撤退と米韓同盟の破棄を使うという考えはビジネスマンのトランプ大統領としては、十分に考えていることでしょう。北朝鮮は長距離弾道ミサイルと核廃棄、アメリカは金正恩体制の保証と在韓米軍の撤退という条件のディールは成立しそうな話ではないでしょうか。

まとめ:日本はどうするべきか

しかし、日本とってはこのディールはあまり良いものではありません。日本に届く短・中距離弾道ミサイルは温存される可能性が高いからです。また、在韓米軍が撤退すれば、朝鮮半島は統一され、現在の38度線はいずれ対馬海峡まで降りてきてしまいます。

それでも、北朝鮮の非核化が確実に行われるのであれば、日本にとって大きなメリットです。弾道ミサイルの脅威は残りますが、これに対しては日本も同じような抑止力として同じ様な弾道ミサイルを持つことと、イージスアショア等の迎撃体制を充実させることである程度の解決の目処は立ちます。

一番の問題は拉致被害者の奪還です。これには首脳同士の直接対話が必要ですし、不本意ですが併合時代の清算として、お金を支払うことになると思われますが、拉致被害者の奪還が何よりも最優先なのは言うまでもありません。これは、アメリカが先に金正恩体制の保証と国交正常化して、次に日本だという流れができれば、解決は可能であると思います。

拉致事件を全て解決した上で、日本も北朝鮮と国交正常化という流れになりますが、私はここでアメリカとも協議した上で、もう一歩踏み出すべきだと思います。具体的には、日米韓に替えて、日米朝の安全保障体制を作るということです。

日本にとって一番困るのは、韓国と北朝鮮が統一され、隣に核を持った巨大な反日国家ができることです。それを回避するには、この荒唐無稽ともいえる日米朝の組み合わせを作ることで、中国から北朝鮮を引き剥がす戦略しかないと思うのです。

中国が韓国を日米韓から引き剥がしにかかり、韓国が離れていくのであれば、対抗して日米は北朝鮮を中国から引き剥がし、こちらの陣営に引きこむという戦略は、一つの案として検討しておくべきだと思います。

幸か不幸か、北朝鮮は言わずと知れた独裁国家であるので、一瞬で態度を変化させることも可能です。アメリカにとっても北朝鮮と安全保障で協力できれば、北朝鮮が保有している短・中距離ミサイルの方向を西向きに変えるだけで、中国に対するけん制のカードとして使えるというメリットもあります。

もちろん、現実には中国と北朝鮮の間には中朝友好協力相互援助条約があり、軍事同盟関係にあり、今すぐに日米側に引き剥がすことは不可能です。しかし、この条約は30年更新で、次回の更新は2021年と間近に迫っています。

それまでに東アジアの情勢がどのように動いているのか予測は難しいですが、これまで完全に敵側だった北朝鮮と日米が組むという荒唐無稽な話も、共産主義の防波堤として存在していた韓国に共産主義国家の北朝鮮に自ら飲み込まれに向かう従北政権が誕生したことを思えば、荒唐無稽とも言えないのかもしれません。

このような大きな視点で、歴史と常識を合えて無視して見てみることも、人とは違った見方と言えるのではないでしょうか。