北朝鮮・新型誘導兵器-「金正恩委員長はレッドラインとクーデターの両方を気にしてるね」

解説-4月17日に金正恩委員長が新型誘導兵器の発射実験を視察したことがニュースになりました。第二回米朝首脳会談が失敗に終わり、ミサイル開発施設の再稼働を進めているという報道があっていた中での発射実験とその視察です。

これは国内向けにアメリカに対抗する意思があると見せるアピールです。しかし、弾道ミサイル発射実験でも、核実験でもなく新型誘導兵器という点に金正恩委員長のアメリカへの恐れが出ています。

レッドラインは核実験と大陸間弾道ミサイル実験再開

2017年の一連の北朝鮮危機の中で、アメリカは本当に戦争一歩手前までの準備をしており、北朝鮮に最大限の圧力を掛けました。その結果、年が明けた2018年4月に金正恩委員長が核実験と大陸間弾道ミサイルの発射実験を中止することを宣言し、その後の南北首脳会談を経て、第一回米朝首脳会談という対話への道が開かれることで、表面上は緊張がゆるんだ形になっています。

北朝鮮が核実験と大陸間弾道ミサイルの発射実験の中止を発表したことが対話路線への転換点なっています。しかし、米朝首脳会談が行われても、あくまで経済制裁は全くゆるめておらず、当面のアメリカの軍事攻撃の可能性が低くなっただけです。

つまり、核実験と大陸間弾道ミサイル実験を再開するということは、対話路線の前提を崩すことになり、即アメリカの軍事的圧力が2017年の戦争一歩手前のレベルにまで引き上げられるレッドラインということになります。

特に軍部の不満に対応する必要性

北朝鮮としてもレッドラインが分かっているからこそ、今回の新型誘導兵器の発射となったと思われます。しかし、いずれにしても軍事的な挑発行為であることは間違いないですし、経済制裁解除に向けて逆効果な行為です。それでも金正恩委員長は発射をやらざるを得なかった理由があると思います。

最大の理由は第二回米朝首脳失敗を受けて、国内統制を強化するためです。会談では寧辺の核施設の廃棄と引き換えに経済制裁を解除させようという北朝鮮の思惑は完全に潰され、成果なく終わりました。首脳会談前はメディアも使って、成功間違いないとアピールしていた手前、成果なく終わったという結果は国内の不満をためる結果となっています。

特に軍部は金正恩委員長に代わってから、先軍政治から軍事力と経済政策を追い求める並進政策へと政策の転換が行われ、これまでの利権と権力が削られている中で、不満が高まっていました。今回の会談失敗で軍部からの声が大きくなるのは確実で、アメリカとの交渉を有利に進めるために、軍事力の強化を進めるべきという意見が力を持つでしょう。

もちろん、その背景には軍部が利権を取り戻したいという意図があるのですが、米朝会談が宥和姿勢で失敗した以上、軍部の意見が力を持ってくることは確実です。その中で、レッドラインを意識しつつ、軍部に配慮する形として今回の新型誘導兵器の発射を行ったのではないかと見ています。

軍の本質とクーデター

軍部は実際に軍事力を持った実力組織であるため、常にクーデターの危険があると言えます。軍部を抑えることは独裁者が必ずやらなくてはならない最優先課題であり、逆に言えば、軍部は独裁者を倒す力を持った独裁国家の中では実質的に唯一の存在であるとも言えます。

しかし、軍部がクーデターを起こして、独裁者を倒しても、その後の国内統治が問題となります。北朝鮮も一応国連加盟の独立国ですから、武力で国家元首を倒した軍部のリーダーを国際社会が正当な指導者と認めるわけにはいきません。これを良しとしてしまえば、同じことが世界中で起きて、民主主義が破壊され、軍事政権が乱立することになります。

逆に言えば、クーデター後の統治が国際社会にも認められ、クーデターを起こした側の安全も確保される見通しがあれば、クーデターを起こす動機が出てくるということです。

「自由朝鮮」の可能性

ここで、重要な北朝鮮国外での動きがあります。北朝鮮の独裁体制の打倒を掲げる「自由朝鮮」が3月1日に臨時政府の樹立を表明したことです。この「自由朝鮮」は金正男の暗殺後、息子のハンソル氏を救出し、注目を集めた組織です。組織の中身は謎に包まれていますが、脱北者を中心として組織されていると見られています。

また、2月にはスペインの北朝鮮大使館を襲撃し、盗んだデータをアメリカのFBIと共有したことを発表しています。つまり、アメリカと関係のある組織であることをアピールしているのです。

これは、先述のクーデターの話とつながってくるのですが、北朝鮮の軍部がこの「自由朝鮮」と連携したらどうでしょう。既に臨時政府樹立を表明しており、アメリカと繋がっているということは、アメリカの後ろ盾も期待できるだけでなく、金一族直系のハンソル氏というカードもあります。

クーデター後はハンソル氏を指導者とし、統治を行えば、国内の権力正統性も確保できる可能性が高いということになます。こうなれば、軍部と「自由朝鮮」が連携すれば、クーデターを起こす動機が高まるという見方ができます。

まとめ:「自由朝鮮」はアメリカのカードにもなる

実際に独裁国家であり、情報が遮断されている北朝鮮の軍部と「自由朝鮮」が連携して動くことは、容易なことではありません。しかし、先述の「自由朝鮮」の臨時政府樹立表明と金一族直系のハンソル氏の存在は、アメリカにとっても使えるカードということです。

具体的には、北朝鮮がレッドラインを越え、アメリカが金正恩委員長の斬首作戦を実施する展開になった後の北朝鮮国内統治に「自由朝鮮」がそのまま使えるということです。これは、アフガンやイラクで失敗中の戦争後の北朝鮮国内統治の処理の道筋が見えているということです。これはつまり、レッドラインを越えた時にアメリカが軍事作戦の実行に際してのハードルが下がることになります。

このような危険が分かっているからこそ、金正恩委員長は経済制裁が効いており、お金もない中でも、軍部を抑えるために新型誘導兵器の発射を行わざるを得なかったのだと見ています。

このように「自由朝鮮」とクーデターのという要素も入れて、今回の新型誘導兵器の発射という暴挙のニュースを見るのは、人とは違った見方と言えるのではないでしょうか。


投稿者: ミカタマン

福岡県出身、熊本在住の普通のサラリーマン。2児の父親です。ニュースを見てひとりで文句を言うのが趣味です。その趣味が高じてこのブログを立ち上げました。

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