ホワイト国除外・対中国-「トランプ大統領の『台湾」という布石が効いてきたな」

解説-8月28日、日本政府は韓国を輸出管理で優遇措置の対象としている「グループA(ホワイト国)」から韓国を除外しました。これにより、韓国はアジアの他の各国と同じ輸出手続きを取る必要があるグループに分類されることになります。

また、8月24日に自動延長予定だったGSOMIA(軍事情報包括保護協定)は韓国側の通告により、破棄が決定されました。アメリカは韓国のGSOMIA破棄を「失望した」という強い言葉で非難し、トランプ大統領もG7の席で「文在寅という人は信用できない」などと異例の他国首脳批判をしています。

前回の記事でも書きましたが、このGSOMIA破棄は日米韓という東アジアの安全保障体制の転換点であり、韓国は日米から離れ、中国・北朝鮮側に流れたということです。この後、東アジアにおける安全保障体制の再構築が行われると予想されます。これについて詳しく説明していきます。

-東アジアにおける韓国の役割とは

今日までの韓国の東アジアにおいての役割とは、「共産主義勢力の防波堤」でした。第二次世界大戦後、世界は共産主義圏のロシア・東側諸国と自由主義圏のアメリカ・西側諸国に分断されました。

世界各地で分断国家ができ、ドイツは東西に分断され、ベトナムは南北に分断され上に戦争も勃発しました。東アジアでは朝鮮半島が分断され、1950年からは南北で朝鮮戦争が起こっており、今も終戦していません。

こうした東西冷戦の歴史の中で、韓国はソ連・中国・北朝鮮といった共産主義圏からの防波堤の役割を果たしてきました。その為、在韓米軍が駐留し軍事的なプレゼンスを高め、経済的にも日本をはじめ西側諸国からの投資もあり、順調な経済発展を進めてきました。これは東西冷戦という情勢の中で、アメリカにとって韓国が東アジアにおいて地政学上、重要な位置にあったからです。

しかし、ソ連の崩壊があり、東西冷戦が終結すると、共産主義圏の脅威はなくなるわけなので、アメリカにとって、韓国の重要度は下がります。それでも、1990年代には北朝鮮の核開発問題が顕在化し、もう一度韓国の重要度は上がりました。

また、2000年代以降は、今度は中国の急速な経済発展による強国化と覇権主義が顕在化し、中国と対峙する最前線として、韓国の重要度は上がっていると見ることができます。

日本も日清戦争から日露戦争に至るまで、朝鮮半島の扱いについて、苦労してきたことを考えると、やはり歴史的に見ても、朝鮮半島というのは地政学上、大国にとって頭を悩ませる重要な地域であることは間違いありません。

-トランプ大統領の登場により、世界は大きく変わった

ところが、トランプ大統領の登場により、アメリカにとっての朝鮮半島の地政学上の重要性は変わっていませんが、アメリカの世界戦略が大きく変わったことが、韓国の運命を変えます。

トランプ大統領は選挙中からアメリカファーストを公言し、大統領になってからも公約通りの政策を実行し続けています。アメリカファーストの視点で見れば、アメリカ軍の海外駐留費は無駄ということになります。

もちろん、そんな単純な話ではなく、アメリカ軍の軍事プレゼンスがあることで、外交交渉や貿易交渉に有利になるだけでなく、海運・空運・陸運がアメリカの軍事力によって確保されることで、アメリカの国力の根幹であるドルを基軸通貨とした自由貿易体制が世界中で保障されているという巨大なメリットがあるのですが。

それでもトランプ大統領自身はアメリカファーストを公約に掲げて当選しているため、NATOの軍事負担を増やすよう圧力を掛けたり、米軍駐留費用の引き上げを各国に求めています。

その動きの中で韓国はミサイル防衛システムTHAAD配備の問題で、中国の圧力にフラフラした態度を取り、ファーウェイ排除の問題でも中国との関係を気にして、はっきりとした態度を示すことができませんでした。

その後、北朝鮮への背取りが見つかるのを恐れたのではないかとも言われる自衛隊機のレーダー照射や、アメリカが仲介したいわゆる慰安婦に関する日韓合意に基づいた財団の一方的な解散など、韓国の度重なる裏切りとも取れる行動により、韓国を切ることを決断したのだと思います。

その証拠が今年6月に在韓アメリカ軍の司令部をソウルからより南方のピョンテクに移転されたことと、戦時作戦統制権の移転が具体化してきたことです。軍事作戦統制権とは、戦争時に軍隊の作戦を指揮する権限のことで、朝鮮戦争以来、国連軍司令官や在韓米軍司令官が掌握しており、現在は在韓米軍側にある権限のことです。この権限を米軍が韓国軍に引き渡すという交渉は盧武鉉大統領の時代から行われてきていましたが、韓国側がズルズルと延期してきていたものです。

この戦時作戦統制権が韓国に返還されると、現在の米韓合同司令部は解体され、韓国の防衛は韓国軍が主導し、米軍がサポートする体制に代わります。国の主権を取り戻すという意味では韓国にとって喜ばしいことのように思えますが、言い換えれば、米軍は本気で韓国を防衛する気はないというサインでもあります。

それを恐れて、これまで韓国は交渉でズルズルと返還を引き延ばしてきたのです。しかし、トランプ大統領はそんな交渉を許す人物ではなく、在韓米軍の撤退は駐留経費が浮くというメリットもあるため、返還が早期具体化しつつあるのです。

この動きはアメリカ軍が韓国から撤退し、米韓同盟が解消されるという流れの上にある動きで、アメリカは中国の覇権主義からの防波堤の役割を韓国には求めないという戦略の転換を図ったと捉えるべきだと思います。

-中国覇権主義にはセキュリティダイヤモンド構想で対抗

冷戦時代の共産主義に代わって中国の覇権主義が今日的脅威として台頭しており、実際に米中は貿易戦争を戦っている最中であり、中国の封じ込めはアメリカの重量な世界戦略における課題です。その中で最前線である韓国からアメリカが手を引くということは、必然的に日本が最前線になってしまうことになります。

その対抗策として、安倍首相はセキュリティダイヤモンド構想に沿って外交をしています。これは2012年に発表された英語論文です。概要はオーストラリア、インド、アメリカの3カ国と日本を四角形に結ぶことで、4つの同じ価値観を共有する民主主義国家の間で、インド洋と太平洋における貿易ルートと法の支配を守るという主張です。当然、中国を念頭に置いており、重要なシーレーンの安全確保と南シナ海への中国の国際法を無視した海洋進出をけん制するための戦略です。

この構想が発展し、トランプ大統領の理解も得て、2017年11月に日米共同外交戦略として発表されました。その後、2018年12月には「アジア再保証イニシアチブ法案」が上院・下院の全会一致で可決されます。その中では、インド太平洋地域における合衆国の国益を再保証することと、「自由で開かれたインド太平洋」の実現を目指すことが定められています。

その過程として、日本やオーストラリアなどの同盟国との防衛協力強化とインドとの先約的パートナシップの強化が挙げられています。安倍首相の構想がアメリカ議会と大統領の署名を経て、正式にアメリカの国家戦略となったのです。

-まとめ:トランプ大統領は『台湾』という布石を打っていた?

このアメリカのインド太平洋についての戦略に欠かせないのが台湾です。台湾は国として認められていないため、国連に加盟しておらず、アメリカとも正式な国交はありません。

しかし、中国への対抗していくためには台湾は地政学上、大変重要な地域です。アメリカはそのこと十分に承知しており、2018年の3月に台湾旅行法という法律を制定しています。

これにより、アメリカは閣僚級の高官や職員などすべての地位の米政府当局者が台湾に渡航し、台湾側の同等の役職者と会談できることや、逆に台湾高官も同じようにアメリカの当局者と会談することができるようになりました。これにより、理屈の上ではトランプ大統領の台湾訪問や、蔡英文総統のアメリカ訪問も可能になりました。

また、軍事面でも台湾への支援を強めており、今年7月にはミサイルや戦車等2400億円以上を売却しています。極めつけは今年の6月にアメリカ国防省が「2019年インド太平洋戦略報告書」の中で台湾を協力すべき対象「国家(country)」と表記したのです。

これは台湾と中国本土を「一つの中国」とする中国共産党政府の方針に真っ向から対立するものです。台湾がアメリカに国家として承認されたということになれば、中国政府が台湾に「内政問題」として軍事侵略することをアメリカが許さないということになります。

ここまで踏み込んだアメリカには中国の覇権主義に対して、同じ価値観を持った民主主義国家と連携して対峙していくという覚悟が見えます。残念ながら、韓国は民主主義ではありますが、同じ価値観を持った国ではないとアメリカが判断しているとも言えます。

いずれにしても、アメリカのインド太平洋戦略と日本の戦略はピッタリ一致しています。この戦略に基づいて、アメリカをはじめ、同じ価値観を持ったインド太平洋の民主主義国家と中国の覇権主義に苦しむアジアの国々とも連携し、中国の覇権主義を封じ込めることが、日本のみならず、世界の国益だと思います。

最後に、私の考えすぎかもしれない私見で締めたいと思います。いつからアメリカは韓国の代わりに台湾を同じ価値観を持った国家として、アジア太平洋戦略の重要なパートナーとして迎える準備をしていたのでしょうか。私はトランプ大統領の就任直後ではないかと考えています。2016年12月2日、トランプ氏は台湾の蔡英文総統から電話が掛かってきたという弁明(自分から掛けたわけではない)付きで、電話会談を行っています。その際にトランプ次期大統領は蔡英文総統を「The President of Taiwan」と呼んでいるのです。

この時は国際常識を知らない不動産王のトランプ大統領が、何も考えずに言ってしまったのだ。これからこんな素人が大統領になって大丈夫なのかという論調ですぐに忘れられましたが、この時から台湾をいずれ国家として承認し、台頭する中国の防波堤とする戦略を考えて布石を打っていたとしたら?トランプ大統領はとんでもない天才なのかもしれません。


投稿者: ミカタマン

福岡県出身、熊本在住の普通のサラリーマン。2児の父親です。ニュースを見てひとりで文句を言うのが趣味です。その趣味が高じてこのブログを立ち上げました。

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